安全な樹木伐倒システム

日本の国土面積の約66%にあたる2500万ha程が森林であり, 林野庁は2020 年までに木材自給率を50 %とすることを目標にしています. しかし,近年では高性能林業機械が開発されているのに対して,年間の労働者1000 人当たりに発生した死傷者数の割合は28.7 と全産業平均の2.3 と比較しても約12倍と高い数値となっています.更に,林業における死傷者の約6割が伐倒作業中に発生しています. そこで私たちは,より安全に樹木を伐倒できる方法を提案しています.


本研究では樹木に穴を開けて,膨張剤を充填して伐倒する方法を提案しています. 膨張材を用いての伐倒は世界初です. この方法は,膨張材が反応するまでの時間の遅れを利用して樹木から離れることができるため, 倒木に巻き込まれる危険性がなく安全です. また,使用する膨張剤の主成分は,森林を殺菌するときに用いられる水酸化カルシウムなので, 自然へのダメージが小さいのが特徴です. 本研究では膨張剤を用いた伐倒方法として次の2つの手法(図1)を提案し, それぞれの手法において実際の立木を伐倒できることが明らかとなりました(図2,図3).


1.S字伐倒


樹木の長手方向に2ヵ所並べて穿孔し, 点対象に切り口を設ける方法です(図1[a]). 上部の切り口を穿孔穴より上部に設けることで,長手方向に亀裂が入りすぎることを防ぎ, 用材部分の品質を高く保てます.


2.連鎖伐倒


切り口を省き,斜めに等間隔で穿孔し伐倒を行う方法です(図1{b}). 工具はチェーンソーを使わずにドリルのみを使用します.

図1 薬剤を用いた伐倒方法


図2 S字伐倒の実験結果


図3 連鎖伐倒の実験結果


図4 伐倒後の切り口


連鎖伐倒については,穿孔間隔を図1{b}の45mmから35mmに狭めて, 薬剤を注入せずに穿孔のみを行ったところ倒木が発生せず, 穿孔穴を下から5個繋げた時点で倒木が発生しました. そのため,穿孔作業中に倒木に巻き込まれる可能性はほぼ無いと言えます. 連鎖伐倒では必要な工具がドリルのみと簡便であるため, 今後は穿孔を効率的に行う機械装置の開発を行っていきます.